
アックスタイムズでは、デジタルプロダクトパスポート(以下、DPPと表記)の制度設計や業界対応、市場の動向を体系的に分析した調査報告書を、2025年6月11日にリリースしました。
今回、広報担当により、本調査を担当したリサーチャーに対するインタビューを実施しました。
聞き手:アックスタイムズ株式会社 広報担当
話し手:アックスタイムズ株式会社 新時代エネルギー・脱炭素テック担当
今回発刊されたレポートのテーマについて
――最初に、今回発刊されたレポートのテーマについて教えてください。
今回は、2027年からEUで製品カテゴリ別に順次導入が開始されるDPPをテーマにレポートを作成しました。
具体的には「デジタルプロダクトパスポートのグローバル政策・業界対応・市場動向に関する調査 2025年版」というタイトルのレポートです。
アックスタイムズでは、2023年にもDPPに関連したレポートとして「デジタルプロダクトパスポートのグローバル政策・業界対応・市場動向に関する調査 2023年版」を発刊しています。
ですので、DPPに関連したレポートとしては今回で2本目になります。

DPPはサーキュラーエコノミー実現のための新たな仕組み
――DPPとは具体的にどういったものでしょうか?
DPPは、サーキュラーエコノミー(資源循環)の実現に向けた施策です。資源を捨てるのではなく循環させることを目的に、様々な製品においてサーキュラーエコノミーに必要な情報を電子的に記録したものとなります。
具体的には、製品や部品の設計・原材料・化学物質・修理履歴・リサイクル方法等の情報を電子的に記録し、クラウドやQRコード等の技術を用いて、サプライチェーン上で共有する仕組みです。
導入が直前に迫ったDPPは注目度の高いテーマ
――今回、DPPに関する調査を実施された背景や目的を教えてください。
DPPはEUで製品を展開している企業をはじめとして、世界中の様々な業界・企業から注目されているテーマでした。
注目されている理由としては主に2点あり、1つ目は製品の流通において根本的な考え方が変わろうとしていること、2つ目は民間企業が対応する義務が発生するということです。
これまでは大量生産大量消費のように最終的には捨てるということを前提にものづくりをしていましたが、サーキュラーエコノミーの観点が前提となることで、今後は循環が可能な製品をつくることが、理想ではなく当たり前の行動として求められます。
加えて、2027年以降、EUで商品を流通させる際にはDPP対応が必要となるため、各企業は準備が急がれており、導入が直前に迫った今、注目度が日に日に高まっています。
注目度が高いテーマであるものの、制度設計の内容やDPPが生まれた背景、導入までのスケジュール、導入後に市場に及ぼす影響の定量的な分析、企業の具体的な動向、EU以外の国・地域における関連政策など、DPPについて体系的に整理された情報を把握できるレポートは多くありません。サーキュラーエコノミーへの転換という大きな潮流の中で、民間企業の皆様に役に立つ情報を提供すべきだと考え、体系的な調査を実施しました。
なお、アックスタイムズでは2023年版として調査実績があるのですが、2027年の導入を前に、注目度のいっそうの高まりを感じたことや、政府や企業の動きが具体化してきたことから、最新版の調査レポートとして2025年版を発刊しました。
業界の生の声や最新の公開情報を整理・分析した活用度の高いレポート
――レポート作成にあたって、どのような調査や分析を行いましたか?
主に、取材による企業ヒアリングや、政府により公開されている最新の政策情報などの調査を実施しました。
DPPの制度設計や全体像を俯瞰的に整理できることは大前提として、EUの制度設計については、DPPの対象としている事項や対象領域、バッテリーパスポートなどの個別事例等を詳細に調査しました。
本レポートを読むことで、DPPとそれに関連して把握すべき情報を体系的に理解できるよう設計しています。
本レポートから得られる内容は、以下の3つです。
1つ目が、DPPの制度設計の最新情報と主要国のDPP関連政策
2つ目が、CIRPASS-2等の企業事例、業界内の議論や政策提言の動き
3つ目が、主要国のDPP導入度のスコアリングや市場インパクト分析
DPPがグローバル市場にもたらす大きな影響
――EUでの導入が予定されている新たな施策とのことですが、日本や世界にも影響があるのでしょうか?
2つの観点から影響があります。
1つ目は、直接的な影響で、EUでの流通を行っている企業、もしくは今後の流通を想定している企業はDPPへの対応が義務化されます。これは、日本を含む世界中の企業に大きな影響を与えることになります。
2つ目は、EUのDPP導入を契機として、グローバル市場でもDPPやこれに類するサーキュラーエコノミー関連の政策が展開される可能性が高まるということです。日本でも実際に「日本版DPP」と呼ばれる制度設計が進んでおり、EUのDPPのみならず、サーキュラーエコノミーに関連する各国の政策に注視する必要があります。
――では、今回のレポートには、EU以外の国の情報も含まれているのでしょうか?
EU以外にも日本・米国・中国を中心にグローバル市場を対象に調査を実施しました。
個別の政策調査に加えて、DPP関連政策の導入度のスコアリングとして定量的に国・地域を比較できるような調査項目も盛り込んでいます。

EUの動向から今後のグローバルトレンドの把握が可能
――DPPや関連政策を調査して、国や地域の温度差や特徴がありましたか?
やはりEUはサーキュラーエコノミーや脱炭素といったテーマにおいて、注力度が高いと感じました。今回のDPPの具体化もEUが先行しています。
他の国でも資源安全保障の観点からサーキュラーエコノミーの政策を展開していますので、注力していないというわけではありません。ただし、相対的に比較した場合、EUが積極的に先行事例を作ることでグローバル市場での存在感を強めようとする動きを感じます。
このことから、EUの動向を把握することによって、EUの理解を深めるだけでなく、グローバル市場のトレンドを把握することにもつながるといえます。
DPPへの対応力は企業の競争力を左右する
――DPPは具体的にどういった企業に影響を与えるのでしょうか?
直接的な影響は主に製造業が受けやすいです。DPPでは食品や医薬品といった製造業のなかでも対象外の領域がありますが、情報開示等のルールメイキングが先行して進んでいるため、DPPの対象外となっています。つまり、今回のDPP導入によって、製造業全般で、より網羅的に情報開示を含む企業の対応事項が具体化します。
もちろん、製造業以外でも、DPPを運用するうえで重要となるIT関連のサービス事業者、ブロックチェーン等の最新技術を開発するスタートアップ、具体的に製品の循環を担う物流業等、影響は広範囲に及びます。
――DPP対応が進むなかでも、競争優位を発揮できる企業とできない企業を分ける要因は何でしょうか?
シンプルに考えると、義務化されるDPPの対応事項を正しく理解・準拠して、市場に製品を流通させることができるかといった点が、一つの分かれ道です。
ただし、それ以外にも重要な点があります。ルールメイキングの段階から積極的に関与できるかどうかです。政府の制度設計に対して単独企業の影響力は小さくとも、業界団体への参画や業界内の企業と連携することで発信力を強め、制度の確立前から積極的に関与していく動きがあります。単に意見や要望を発信するだけでなく、そういった活動を通じて、今後の制度設計や業界動向の把握に繋がる最新の情報をキャッチしやすくなり、将来の動きを想定して自社の対応事項を早くから検討できますので、競争優位の確立に繋がります。そういった点で、制度が確立する前から情報にアクセスしていく感度の高さが、もう一つの分かれ道になると感じています。
――対応を積極化する企業が得ているメリットや、対応が遅れることへのリスクはありますか?
積極的な企業では、すでに自社の製品について情報公開などの対応を具体化している事例が増えています。
今後サーキュラーエコノミーが市場の前提として定着していくと、消費者を含む製品を需要する側の意識も変化すると想定されます。そうなると順応できている商品がより採用されやすくなります。一方で、対応が遅れた企業や製品は、市場への流通という直接的な影響だけではなく、企業としてのブランド力にもネガティブな影響が出る可能性があります。

今後の方向性の把握に繋がる「CIRPASS-2」
――企業事例も調査されたとのことですが、特に注目した取り組みや事例はありますか?
DPPの導入に向けて「CIRPASS-2」という代表的なプロジェクトがあるのですが、本プロジェクトの参画企業の具体的な動きから、今後の動向や方向性を把握できるため、個々の動向をレポートで整理しています。
各社のプロジェクトにおいて、現状課題となっていることや、実際にEUの民間企業はどういった事業展開を想定しているかの示唆を得られるものだと思います。
DPPの導入が生み出すビジネスチャンス
――DPP調査を通じて、業界の未来や将来像について何を感じましたか?
今回の調査において、DPPが予定通り導入に向けた具体化が進んでいること捉えることができました。これは、グローバル市場がサーキュラーエコノミーへの転換を進めることを示唆するものだと感じています。
DPPについて2023年版、2025年版として定点的に調査を実施しましたが、その過程で、当初の計画からの後ろ倒しや中止といった動きは捉えておらず、政府でも民間でも取り組みが具体化しています。
サーキュラーエコノミーへの転換は、現状の産業構造を変える不安、コスト面の課題、対応にかかる労力など様々なハードルがあることも事実ですが、新たな市場を生みだす効果もあります。今回のDPPでいうと、単なる情報開示という対応でなく、再生材の活用、資源循環を図る物流網の構築、情報連携を図りつつ自社の情報を守るためのシステム基盤やデジタル技術などの新規ビジネス・市場拡大領域が見込まれます。
発刊直後から多くの反響をいただいた
――今回のレポートは2025年6月に発刊したとのことですが、反響はいかがでしょうか。
おかげさまで、発刊後にすぐに多数の企業様にご購入いただいております。
2025年版は2023年版をご購入いただいた企業様だけでなく新たな業界・企業様からもお問い合わせをいただけえており、DPPを把握すべきと考える業界や企業様が着実に増えているということかと思います。DPPの影響力の広がりや関心の高まりを感じています。
製造業を中心に幅広い企業様にご購入いただけている
――具体的にはどういった企業・部署の方がご購入されているのでしょうか?
相対的に製造業関連の企業様が多いですが、IT・デジタル関連の企業様など、様々です。
部署としては、環境関連やマーケティング関連の部門はもちろんですが、他にも研究開発や技術関連の部門の方にもご購入いただいております。中長期的な視点で戦略策定・事業推進を担われるご担当者様にとっても関心の高いテーマになっているようです。
制度設計の把握から戦略構築まで幅広く活用できるレポート
――レポートをご購入いただいた方には、どのような点がどのような場面に役立つと感じていますか?
DPPについて体系的な調査をしているので、制度設計の把握から周辺情報まで幅広い情報としてご活用頂けるかと存じます。EUだけでなく日本・米国・中国の調査、先行するバッテリー領域に加えて幅広い業界を調査しており、それらを比較しながら動向を把握できるため、自社に関連性の強い領域だけでなく、市場全体の動きを捉えていただけます。
本レポートでは各国や業界で議論されているポイントも整理しているため、現時点での制度設計の事実情報だけではなく、今後の方向性についても示唆を得られる内容となっています。
DPPへの直接的な対応のためだけでなく、製品設計や原料調達、リサイクル方法、回収(物流)、自社の情報の管理・保護の体制検討など、中長期的な観点からの戦略構築や優先対応事項の整理にもご活用いただきたいです。

レポートの内容はオンライン面談サービスで確認できる
――今回のインタビュー記事を通じて調査結果に関心を持たれる方がたくさんいらっしゃるかと思います。購入前にレポート内容を確認する手段はありますか?
DPPにご関心いただけることは、調査を担当したリサーチャーとしては非常に嬉しく思います。
アックスタイムズでは、ご関心をいただきご購入をご検討いただける場合には、調査を担当したコンサルタント(リサーチャー)とのオンライン面談サービスをご用意しております。
こちらのサービスでは、オンライン会議システムを使って、実際のレポートを画面共有させていただきながら、ご購入前にレポートの内容をご確認いただけます。
サービスのポイントとしては、単にレポートが事前に確認できるだけではなく、ご購入を検討されている企業様・部署様がお知りになりたいポイントを踏まえた上で、レポートの活用方法までご案内できる点です。
お問い合わせをいただければ、アックスタイムズの専門家が対応させていただきますので、ぜひご活用ください。
以上
注:このインタビューは2025年8月28日に実施されました
聞き手:アックスタイムズ株式会社 広報担当
話し手:アックスタイムズ株式会社 新時代エネルギー・脱炭素テック担当
この記事の元となる「体系的に整理された調査報告書」について
デジタルプロダクトパスポートのグローバル政策・業界対応・市場動向に関する調査 2025年版

発売日
2025年6月11日
体裁
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調査・制作
アックスタイムズ株式会社
税込価格
33,000円(税抜30,000円)~