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アックスタイムズでは、このたび最先端の脱炭素・気候変動対策関連の技術・事業開発を行うスタートアップに関する市場調査レポートを発行しました。
スタートアップが生み出す革新的な技術やその参入市場を分析することによって、今後の脱炭素関連市場のトレンドを把握できるとともに、事業拡大に繋がる新たなシーズを発見することもできます。

[欧州版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版(発行日:2024年6月12日)

なお、本記事では、今回発行した「欧州版」に加えて、先行して調査を実施した「米国版」と「日本版」の各調査結果も踏まえて作成しました。グローバル市場でも特に脱炭素化を強力に推進している欧州、米国、日本の最先端スタートアップ事例をもとに、注目分野の概況などをご覧ください。
(市場調査レポートについて:本記事後方「この記事の元となる「体系的に整理された調査報告書」について」を参照)

[欧州版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版
欧州版429事例:2024年6月12日発行
脱炭素を推進する米国スタートアップ391社 及び 次世代技術トレンド徹底調査
米国版391事例:2023年3月7日発行
脱炭素関連国内注目スタートアップ110社の事業動向・技術キーワード調査
日本版110事例:2023年3月20日発行

脱炭素スタートアップの概要

脱炭素市場におけるスタートアップの位置付け

多くの国・地域がカーボンニュートラルを実現するための具体的期限(日本・米国・欧州主要国では2050年)を設定したうえで、国策として技術開発を進めています。企業単位においても、巨大な市場・ビジネスチャンスを見込むことができる脱炭素市場において、資本力に強みをもつ大手企業による技術開発競争が過熱しています。一方で、大手企業は既存事業との兼ね合い(石油をベースとしたサプライチェーンを構築している既存ビジネスモデル等)や、短期的な収益性を求める株主への配慮等から、自社での技術開発を推進するうえでの一定の制約が課題となっています。

COP28:何が話し合われ、どんな成果を得られたのか、その影響とは

2023年11月下旬よりドバイにて開催された、COP28の議題や成果、COPの歴史における位置づけなどを解説する。

そういった背景から、新たな技術開発・ビジネスモデルの構築において重要な位置付けを担う存在が脱炭素・気候変動対策スタートアップです。資本力の観点からは課題がみられるものの、大手企業やVC・アクセラレータからの投資を受けることによって開発資金をカバーしつつ、大手企業にはない特徴的な技術を開発し、更には既存市場に捕らわれない新しいビジネスモデルを生み出しています。グローバル市場における大きな潮流である脱炭素市場に新たなトレンドを生み出すことで、IT産業におけるGAFAMのように、将来の巨大企業(ユニコーン)となる可能性を秘めた存在となっています。

脱炭素スタートアップが展開する分野

分野対象範疇(カテゴリ)
再エネ関連(低負荷電源を含む)太陽光発電、風力発電、低負荷電源、再エネ導入支援ソフトウェア、再エネ販売
原発・核融合関連原発・核融合
グリッド関連電力管理・調整、電力貯蔵、送電網関連、エネルギー貯蔵、マイクログリッド・VPP
省エネ関連省エネ(業務)、データセンター、建築設計、建材・部品
自動車・充電(設備)関連(モビリティ含む)(電池は除く)電動関連、充電関連、シェアリング・サブスク等、自動運転、水素モビリティ、ビッグデータ、
物流・サービス
蓄電池関連蓄電池、部材、蓄電池評価
新燃料関連水素、燃料電池、他燃料
CO2固定化関連セメント・コンクリート、プラスチック、樹木・藻類等、DAC
炭素会計・クレジット・気候変動ソフト等関連炭素会計・CO2見える化、ESG評価等、気候変動予測・災害監視・データ提供等、カーボンオフセット・スコアリング等、保険設計、環境コンサルティング
農林水産・食品開発・食品ロス・消費財ロス・他関連代替食品、培養食品、脱炭素食品・減容食品、種子開発・遺伝子工学、土壌・飼料・肥料・農薬・分解、生分解素材・植物素材・代替素材、データ管理・解析/人工農業/生態調査、電動・装置・機器・ロボット、食品長寿命化、ビジネスモデル
製造関連製造関連
3R関連廃棄物利用、リユース、リデュース、レンタル・リサイクル/プラットフォーム、自動分別・ゴミ箱
水資源・海洋・空質(測定/監視)関連水道・パイプ・水資源・浄水、水質、海洋、空質
宇宙・地中探査/採掘等関連地中探査/採掘
その他(コミュニティ運営、投資、サービス)コミュニティ運営、投資、サービス
出所:[欧州版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版(米国版・日本版も同じ分野で整理。ただし対象範疇はやや異なる)

脱炭素化の事例として、自動車のEV化や、太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーの導入などが想起されやすいですが、脱炭素・気候変動対策スタートアップの展開領域からは、非常に幅広く多様な産業にむけた技術開発が進んでいることがわかります。

欧州・米国・日本の地域比較

地域別脱炭素テーマ(上位3選)

本調査において、脱炭素・気候変動対策スタートアップの事例数が多い3分野は下表の通りです。なお、各市場調査レポートでは、下記の分野を含む全分野について、分野別の分析や、技術・サービスキーワードについて詳述しています。

ランキング欧州米国日本
1農林水産関連農林水産関連炭素会計関連
2自動車・充電関連自動車・充電関連再エネ関連
3再エネ関連省エネ関連自動車・充電関連

欧州・米国・日本に共通して、「自動車・充電関連」が上位3位以内にランクインしています。欧州ではVolkswagenなどBMW、米国ではGeneral MotorsやFord、日本ではトヨタ自動車や本田技研工業など、各地域に共通して、グローバル展開を行う大手自動車メーカーが本社を設置しており、自動車産業が重要な位置付けとなっている点からも、脱炭素化関連の技術開発が進みやすい環境であることが背景にあるとみられます。

また、「再エネ関連」、もしくは「省エネ関連」として、エネルギー関連の分野がランクインしている点も共通しています。エネルギー関連施策の方針や注力度は、各地域の事情により違いが生まれるものの、エネルギー価格高騰への対策やエネルギー安全保障の強化はグローバル市場共通の課題であり、エネルギー関連の技術開発が将来の国力に直結する重要な分野となります。

(ご参考:欧米ランキング)

欧州脱炭素スタートアップ・テーマランキング
欧州調査結果(429事例構成比・ランキング)

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000101197.html

米国脱炭素スタートアップ・テーマランキング
米国調査結果(391事例構成比・ランキング)

プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000101197.html

地域別特徴

欧州(429事例を対象)米国(391事例を対象)日本(110事例を対象)
欧州は国ごとに技術・ビジネスに特徴があり、多様性のあるスタートアップが育っています。
欧州全体(429事例)の概況としては、「農林水産関連」の事例が最も多く、次いで「自動車・充電関連」と「再エネ関連」が続いています。農業大国であるフランスや、自動車産業が盛んなドイツなど、重要産業に紐づいたスタートアップの事例が多い傾向があります。再エネ先進国を含む欧州では、再エネ関連のスタートアップ事例も多く立ち上がっています
なお、欧州版調査では、西欧(202事例)・英愛(79事例)・北欧(104事例)・東欧(6事例)・南欧(38事例)を対象とし、国別の分析も行っています。
米国は、世界中から投資資金が集まるスタートアップ環境が特徴であり、それは脱炭素市場も例外ではありません。IT業界においてGAFAMが誕生し、グローバル市場のトレンドを生み出したように、VC・アクセラレータからの投資による革新的な技術開発によって、将来の脱炭素業界をリードする新たな巨大企業(ユニコーン)が現れる可能性を秘めています。
最も事例が多い「農林水産関連」、「自動車・充電関連」、「省エネ関連」 だけではなく、「炭素会計」、「CO2固定化」、「3R」、「蓄電池」、「宇宙関連」など、多様なスタートアップがVC等からの投資を受けて躍動しています。
日本政府は、2030年に温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することを目標として掲げており、2兆円を超える予算を有したGI基金(グリーンイノベーション基金)として官民一体型の技術開発体制も構築しています。
ランキング上位の「炭素会計関連」、「再エネ関連」、「自動車・充電関連」以外の分野でも、2023年に「水素基本戦略」を打ち出したことにより国策化の姿勢を強めた「新燃料」や、グローバル市場で開発競争が進む「原発・核融合」に関する技術など、グローバル市場に発信できる最先端技術の開発が進んでいます。

注目分野動向

本シリーズの調査結果において、脱炭素・気候変動対策スタートアップの事例が多くみられた分野の概要を整理しています。

農林水産関連

食肉に代わる植物ベースの食品開発など、新しい食品開発・生産プロセスを生み出す代替食品を筆頭に、ビッグデータ活用による事業のデジタル化や、植物由来の素材を開発するバイオ化技術など、多様な技術開発が進んでいます。特に欧州・米国による技術開発事例が多くみられるものの、日本でも植物性タンパク質の代替肉やバイオスティミュラント素材の開発などの技術開発を進めるスタートアップが誕生しています。

自動車・充電関連

石油由来の燃料使用からの代替を図るために自動車のEV化がグローバル市場で進む中で、スタートアップによる技術開発も急速に進んでいます。自動車本体の電化対応に限らず、EVに効率的に給電を行う技術や、EVの普及には欠かせない充電インフラニーズを捉えたビジネスモデルなど、スタートアップならではの特徴的な展開にも注目が集まっています。

炭素会計関連

大手企業を中心として、自社の事業・製品が生み出すGHG排出量の算定や環境負荷の定量的な情報開示への要求が強まっています。また、企業が脱炭素化を推進するための手段として、カーボンオフセットなど新しい脱炭素化のスキーム構築も進んでいます。そういった背景から、GHG排出量の可視化を支援する技術や、カーボンオフセット市場を創出するビジネスモデルなど、炭素会計に関するスタートアップの重要度が高まっています。

再エネ関連

太陽光発電や風力発電などの発電手法だけではなく、再エネ導入支援ソフトウエアや再エネ販売など、再エネの普及に関わる新しいビジネスモデルも対象として、さまざまなスタートアップが展開しています。発電における脱炭素化はグローバル市場でありながら、地域ごとに利用しているエネルギー源の違い等があり、再エネ導入に向けた方針はさまざまです。スタートアップが開発する技術やビジネスモデルを地域ごとに捉えることで、グローバル市場全体の潮流や将来のトレンドを把握することができます。

気候テックのスタートアップに投資するVC・アクセラレータ

スタートアップが安定した開発環境を構築し、優れた人材を確保し、技術開発を中長期的に継続するために、資金調達は大きな課題となります。そのため、脱炭素市場に投資を行うVC・アクセラレータは、非常に重要な役割を担っています。スタートアップにとっては、VC・アクセラレータから出資を受けているという事実は、自社の技術が投資家の目線・調査において、市場からの一定のニーズやPMF(プロダクトマーケットフィット、市場から高い需要を得ている判断基準の一つ)が見込まれることを示すものでもあり、知名度や与信評価を高めるうえでも大きな後押しとなります。

VC・アクセラレータ等が技術開発において重要な位置付けであることを踏まえ、米国および欧州の調査においては、気候テックのスタートアップに投資している主要なVC・アクセラレータの出資を受けているスタートアップをリスティング対象とすることによって、脱炭素市場のなかでも特に有望度の高い技術について分析を行っています。

欧州(VC・アクセラレータ等の例)

360 Capital
ABB Technology Ventures
Almi Invest
bp Ventures
Climate Investments
Contrarian Ventures

Demeter
eCAPITAL ENTREPRENEURIAL PARTNERSEIT
EIT InnoEnergy
Emerald Technology Ventures
ENGIE New Ventures
ETF Partners

Eurazeo
European Innovation Council
Future Energy Ventures
Future Positive Capital
High-Tech Gründerfonds
IP Group

Katapult Ocean
Norrsken VC
Shell Ventures ほか

米国(VC・アクセラレータ等の例)

Breakthrough Energy Ventures
Cascade Investment
Climate Pledge Fund
DCVC

ENGIE New Ventures
Footprint Coalition
Khosla Ventures
MCJ Collective

Obvious Ventures
Prelude Ventures
S2G Ventures
Tao Capital Partners

Techstars
TotalEnergies Ventures
Unovis Asset Management
Y Combinator ほか

まとめ

「脱炭素化」というフレーズを耳にしない日はないほど、ビジネスシーンだけではなく日常生活においても脱炭素・気候変動対策の取り組みは普及しています。脱炭素市場に参入しているスタートアップは、今後、グローバルかつ多様な産業に影響を与える潜在力を持っており、その動向を把握することは、ビジネスチャンスの獲得において非常に重要です。

ただし、想像もしなかったような革新的な技術・ビジネスモデルを生み出すスタートアップの動向をタイムリーに捉えることは、自国および自社の事業領域の活動だけでは難しく、その情報把握の遅れがグローバル市場における技術開発競争に大きな差を生む可能性もあります。

アックスタイムズでは、欧州・米国・日本に続き、「イスラエル版」の発行を計画しており、調査を開始しています。今後も脱炭素・気候変動対策スタートアップに注目し、最先端かつ最新の技術開発動向を調査することによって、事業の成功を支える情報サービスを提供します。

記事制作 アックスタイムズ

この記事の元となる「体系的に整理された調査報告書」について

欧州版 調査結果

調査報告書名:[欧州版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版
発行日   :2024年6月12日
体裁    :PDF_Slide16:9_179pages
調査・制作 :アックスタイムズ株式会社
[目次・調査概要]
https://axetimes.com/report/research-about_decarbonisation-tech-and-business-trend_from-startups_europe_2024/
[税込価格]
事業所ライセンス版PDF  550,000円(税抜500,000円)
企業ライセンス版PDF   550,000円(税抜500,000円)
グループライセンス版PDF 825,000円(税抜750,000円)

research-report_24_2024-06_v5
[欧州版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版

革新的トレンドを創り出すスタートアップは、将来の巨大企業(ユニコーン)となる可能性を大いに秘めています。本調査では欧州の脱炭素・気候変動対策スタートアップ429社の技術動向から次世代ビジネスを展望しました。

米国版 調査結果

調査報告書名:脱炭素を推進する米国スタートアップ391社 及び 次世代技術トレンド徹底調査
発行日   :2023年3月7日
体裁    :PDF_Slide16:9_122pages
調査・制作 :アックスタイムズ株式会社
[目次・調査概要]
https://axetimes.com/report/research-about_decarbonisation-tech-and-business-trend_391-startups_us_2023-03/
[税込価格]
事業所ライセンス版PDF  550,000円(税抜500,000円)
企業ライセンス版PDF   550,000円(税抜500,000円)
グループライセンス版PDF 825,000円(税抜750,000円)

research-report_12_2023-03
脱炭素を推進する米国スタートアップ391社 及び 次世代技術トレンド徹底調査

IT業界のGAFAMのように、米国スタートアップが開発する技術は今後の世界のトレンドになる可能性を大いに秘めています。本調査では米国の脱炭素・気候変動対策スタートアップ391社の技術動向から次世代ビジネスを展望しました。

日本版 調査結果

調査報告書名:脱炭素関連国内注目スタートアップ110社の事業動向・技術キーワード調査
発行日   :2023年3月20日
体裁    :PDF_Slide16:9_47pages
調査・制作 :アックスタイムズ株式会社
[目次・調査概要]
https://axetimes.com/report/research-about_decarbonisation-tech-and-business-trend_110-startups_japan_2023-03/
[税込価格]
事業所ライセンス版PDF  99,000円(税抜90,000円)
企業ライセンス版PDF   148,500円(税抜135,000円)
グループライセンス版PDF 247,500円(税抜225,000円)

research-report_14_2023-03
脱炭素関連国内注目スタートアップ110社の事業動向・技術キーワード調査

脱炭素関連スタートアップが躍動しています。新規性のある独自技術に加え、大手企業とのアライアンス等もみられ、その存在感は日々強まっています。当該調査では、設立から約10年未満(2014年以降設立)の企業を対象として、展開領域、事業動向・技術キーワードを整理しました。