COPの意義とその歴史 ~主要な会議や採択された文書を解説~

2022年11月、エジプトのシャルム・エル・シェイクでCOP27が開催された。ここ数年世界的に多発する異常気象や気象災害などを背景として、気候変動に対する関心は年々高まっている。そのためか、COPに関する報道も例年になく多かったように思われる。

しかしCOPとはどんなものか、なぜ開催されるようになったのか、今まででどんなことが決められてきたのかなどを把握している方はあまり多くないのではないだろうか。

今回の記事はCOPの意義や歴史、主要な会議で決められた内容などを解説する。

COPとは何か

気候変動は日本だけでなく、他の国々にとっても早急に解決しなければならない課題である。

しかし、気候変動はグローバルイシューであり、一国が対策を講じても解決できるものではない。そのため、各国が連携して取り組まなければ効果を発揮しない。

ただ、それぞれの国は固有の事情を抱えている。例えば、先進国はすぐにでも地球温暖化を食い止めたいが、開発途上国は経済発展のために化石燃料を使いたいといったケースがありうる。そこで、各国が交渉を行い、合意を得た上でルール作りを行う場所が必要となる。それがCOPだ。

COPが開かれるまでの経緯

1970年代になると、科学技術の進歩によって「化石燃料を大量に消費すると二酸化炭素が発生し、地球温暖化が進んでさまざまな弊害がもたらされる」ことが発見され、知られるようになった。そのため、これに対応するための国際的な取り組みが求められるようになった。

1992年6月、ブラジル・リオデジャネイロにおいて「環境と開発に関する国際会議(通称:地球サミット)」が開催された。この開銀は世界182カ国の代表やNGO代表などが参加し、環境分野での国際的な取組みに関する行動計画「アジェンダ21」が採択された。

この会議で結ばれた条約の1つが「気候変動枠組み条約」である。この中で、この条約に批准した国々は温室効果ガスの排出・吸収を抑制し、締結国温暖化対策の国別計画を策定すること義務づけられている。

そして、この条約に基づき毎年COPを開催することが決定した。COPとは「Conference of the Parties 」の略で、日本語では「締約国会議」の意味。つまり「条約を結んだ国々による会議」ということで、気候変動枠組み条約に批准した国が集まり、年に1度会議を開催することが決定したのだ。

COPの歴史と主要な会議・決められた内容

ここからは、歴代の主要なCOPを紹介し、それぞれの会議でどんな内容が決められたのかを紹介する。

COP1・COP2〜迫りくる2000年代に、どのように温室効果ガスを削減するか〜

最初のCOPは1995年3月にベルリン(ドイツ)で、その翌年7月にはジュネーブ(スイス)で開催された。

この2回の会議では、目前に迫った2000年代において各国がどのように温室効果ガスの排出を抑制し、温暖化対策を推進するかが主要な議題とされた。その結果として、COP1ではCO2排出削減について各国が具体的なアクションをとることを義務付けること、また複数の国が共同で削減を実施するプロジェクトを実施することが決定された。

特に、後者の複数国による共同プロジェクトは「共同実施活動(Activities Implemented Jointly, AIJ)」と呼ばれ、後の京都議定書以降の年代で「クリーン開発メカニズム(以下、CDM)」として発展していく制度となる重要な枠組みである。

COP3〜「京都議定書」の採択〜

3回目のCOP3は1997年に京都で開かれた。そして、この会議で採択されたのが「京都議定書」である。

京都議定書は、以下の2つの点において重要な宣言である。

  1. 法的拘束力のある温室効果ガス排出量の削減目標を設定したこと

京都議定書に批准した全ての先進国は、2008年〜2012年で少なくとも5%の温室効果ガスを削減することが定められた。また、「温室効果ガス」は以下の6種類と決められた。

  • 二酸化炭素
  • メタン
  • 一酸化二窒素(亜酸化水素)
  • ハイドロフルオカーボン
  • パーフルオロカーボン
  • 六フッ化硫黄

また、国ごとに温室効果ガス排出量の削減目標を定めた(EUは8%、アメリカ合衆国は7%、日本は6%)。

  1. 目標達成のためのしくみ(排出量取引・CDMなど)を導入したこと

京都議定書では、温室効果ガスの排出量を削減するための具体的な取り組みの方法が決められた。以下にその内容を紹介する。

名称内容
排出量取引温室効果ガスの排出枠が余った先進国と、排出枠を超過した先進国の間で排出枠を取引できる
クリーン開発メカニズム(CDM)先進国が途上国の温室効果ガスの排出削の取り組みを技術面・資金面で支援する。また、これにより途上国が排出量削減に貢献した場合、途上国における削減量を自国の削減分から差し引ける
共同実施先進国が他の先進国を技術・資金的に支援し、排出量削減に貢献した場合、他国での削減量の一部を自国の削減分から差し引ける

これら3つの取り組みは、2020年代のCOPにおいてもなお実施方法について議論が行われ、各国が取り組みのために行動している。

COP4〜COP6〜京都議定書で決めたことをどのように達成していくか〜

ここからのCOPは、基本的には京都議定書の内容を達成するための枠組みや行動、資金繰りなどを決めていくものとなる。

まず、1998年にブエノスアイレス(アルゼンチン)で行われたCOP4では「ブエノスアイレス行動計画」が採択された。この計画は、今後期限つきの目標や取り決めを決定するためのものである。

また、1999年にボン(ドイツ)で行われたCOP5では、京都議定書の内容を具体的に実行するための取り組みを実行に移すための取り決めをいくつか行っている。

そして、翌年の2000年にハーグ(オランダ)で行われ、さらにその翌年の2001年に持ち越されボン(ドイツ)でも開催されたCOP6では各国のキャパシティビルディングや資金計画などを決定した「ボン合意」が得られた。

COP11・12〜京都議定書後、どのように温室効果ガスを削減するか〜

2000年代に入ると、COPでは京都議定書の効力期間である2012年以降の枠組みや目標に関する議題が出されるようになった。また、今まではCOP参加国の中でも具体的な数字付きの目標を課せられ、温室効果ガス排出削減ための行動を行うのは主に先進国の役割であった。

しかし、この年代頃からは途上国の課題や、途上国がどのように削減のための行動を行うかについても議論が行われ始めている。

COP15〜「コペンハーゲン合意」で初めて気温目標が登場〜

2009年にコペンハーゲン(デンマーク)で開催されたCOP15は、京都議定書の効力が終了する2013年以降において法的な効力を発揮する文書を作成することを目指して開かれたものである。そして、その結果として「コペンハーゲン合意」が作成された。

この文書中では以下の内容が盛り込まれた。

  1. 世界全体の気温の上昇を2℃以内に留める
  2. 1.を実行するために、先進国は2020年の削減目標を、途上国は削減行動を2010 年 1 月 31 日までに提出する
  3. 先進国は自国の取り組みを以降のCOPにおいて測定/報告/検証の対象とし、途上国も自発的な取り組みを以降の協議・分析の対象とする

このように、コペンハーゲン合意は気温上昇に着眼し、その数値に対して各国が働きかけることが求められた点において画期的といえる。

また、なぜ2009年のうちから2013年以降について考えられていたのかというと、京都議定書が発行されるまでに長い期間を要したことにあるといわれている。

京都議定書の交渉が始められたのは1995年のCOP1、採択が行われたのが1997年のCOP3。その後も議定書の詳細な部分に関する議論が複数のCOPにわたって持たれ、京都議定書は2005年にようやく発行された。このように、交渉から10年の期間を要したのである。

なぜこれほど時間がかかるのか。その理由として以下の2点が考えられる。1つ目は、このような国際的な議定書などの合意文書を作成する場合、全体の方向性をまとめ、条文を作成するために各国間の調整などの時間を要すること。

2つ目は、国際会議において議定書などの合意文書が作成されたのちには以下のステップを踏むことが挙げられる。

採択

STEP
1

非準国内における国内法上の手続き(法律の立案、改正、国会での承認など

STEP
2

締結

STEP
3

効力を発揮

STEP
4

このような一連の手続きのために必要な時間を考えると、2013年以降の枠組みをスムーズに始めるためには2009年までに採択されることが望ましいと考えられていたのだ。

COP21〜「パリ協定」で温度の努力目標が2℃→1.5℃に〜

2015年にパリ(フランス)で開催されたCOP15では2020年以降の温暖化対策のための枠組みについて議論され、その成果として「パリ協定」が作成された。その主な内容は以下の通りである。

  1. 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く、1.5℃に抑える努力をする
  2. できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトする
  3.  21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

パリ協定は以下の2つの点において画期的なものといえる。まず1つは、先のデンマーク合意に比べ、上昇温度に対する目標がより厳しいものとなったこと。もう1つは文書の発行基準にある。

通常、このような国際的な取り決めは発効するために条件が設けられる、パリ協定では、以下の2つが発効条件であった。

  • 55カ国以上が参加すること
  • 世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること

この条件を満たすためには当時温暖化への取り組みに消極的であった中国やインドを巻き込むことがハードルであった。しかし、アメリカのオバマ大統領(当時)がこの2カ国に働きかけたことにより、採択の翌年である2016年に発効を迎えた。

COP26〜1.5℃目標を確実に達成するために〜

COPでは2020年〜2030年の10年間を温暖化抑制のための「決定的な10年間」と位置付けている。そのため、2021年にグラスゴー(イギリス)で行われたCOP26は、その期間の最初の会議となった(2020年は新型コロナウイルスの感染拡大のため延期され、2021年に持ち越された)。

今回の会議では「グラスゴー気候合意」が採択され、その中で産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃とすることが決定された。それ以外に決定されたものは以下の内容である。

  1. 化石燃料の使用を段階的に廃止すること
  2. 非効率な化石燃料への補助金を段階的に廃止すること
  3. 全ての国は2022年に2030年までの排出目標を再検討し、強化すること
  4. パリ協定の実施指針について未決定であった市場メカニズムに関する基本的な基準について合意
    (これにより、パリ協定が完全に運用されることに)

グラスゴー気候合意の最大のポイントは、なんといっても気温上昇に関する目標である。これまでは1.5℃は努力目標であったため、目標数値を引き上げることとなった。そして、これに対応するために化石燃料の使用非効率な化石燃料への補助金を段階的に廃止することを各国に求めている。

また、今回の文書では、気候変動によって発生する自然災害である「気象災害」による損失と損害にもついても言及され、この分野に対応するための基金の設立が決定した。

まとめ

今回、COPの歴史および主要なCOPにおける決定事項を解説した。

COPの歴史を見ると、締結国の中でもとりわけ先進国に求められる基準は年を重ねるごとに厳しくなっている。また、開発途上国にも温室効果ガスを削減することが求められるようになり、世界的に経済発展と環境への対応を同時に行わなければならない時代へと突入していることが分かる。

COPは毎年開催され、数年先に各国で実行すべき基準について議論されるため、毎年その内容を注視すべきものだと考える。今後もaxetimes Bizでは毎年、COPに注目していきたい。

記事制作 津島亜海

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