脱炭素・気候変動対策スタートアップ調査 イスラエル 272事例

アックスタイムズでは、このたび脱炭素・気候変動対策に関するイスラエルのスタートアップを調査対象とした市場調査レポートを発刊しました。本調査は、脱炭素・気候変動対策スタートアップ調査シリーズの第4弾であり、スタートアップ事例を基にした体系的な調査によって、脱炭素関連市場のグローバル技術トレンドを把握することを目的に調査を実施しました。

[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版(発行日:2024年12月16日)

[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版

本記事は、上記調査報告書の調査結果を踏まえた最新動向として作成しています。世界屈指の技術力を誇るイスラエルのスタートアップ事例からの学びは多く、技術トレンドが体系的に整理された本調査報告書を活用して、脱炭素ビジネス開発やアライアンス戦略などにお役立てください。

[関連記事]
脱炭素・気候変動対策スタートアップ調査 欧州・米国・日本 930事例

スタートアップを調査する目的

従来にはない革新的な技術を生み出すスタートアップをリストアップしたうえで、技術領域や参入市場といった調査の軸を設けて整理・分析することによって、単独企業の動向からだけではとらえられない市場トレンドを把握することができます。特に、脱炭素市場は今後数十年単位で成長が期待されるため、市場のシーズを早期に把握することで、中長期的な事業拡大に繋げることができます。世界の主要国がカーボンニュートラルの実現を公約として掲げることも後押しとなり、次世代のイノベーションを生み出すスタートアップが続々と生まれているなかで、その動向から市場のトレンドを把握することは、業種・業態を問わず、高い価値を期待できる調査テーマとなります。

調査結果から得られる価値

[ポイント]
(1)まるで現地の展示会に参加しているように、一挙に有望企業の情報を得ることができます
(2)VCから出資を受けた企業が対象となっており、投資家目線での有望事例を把握できます
(3)専門市場調査員による客観的かつ体系的な分析結果がまとまっています

本調査は、脱炭素関連15分野、全272事例を把握することができ、さながら、脱炭素・気候変動対策関連の展示会に参加するかのように企業情報を一挙に得ることができます。事例のリスト化の工程では、大手VC(ベンチャーキャピタル)の出資先企業を対象とすることで、投資家目線でも有望視される技術・サービスについて捉えることができます。さらに、単なる企業リストではなく、専門市場調査員による体系立てた調査結果が整理されているため、実際にイスラエルの現地展示会に参加するよりも効率的かつ客観的に情報を取得し、事業に生かすことができます。最後に、語学スキルを有した調査員によって日本語で整理されています。
これらの点は、イスラエル版に限らず、部分的な例外を除き、米国版、日本版、欧州版にも共通しており、脱炭素・気候変動対策スタートアップ調査シリーズの大きな特徴となります。

シリーズ第4弾としてイスラエルに着目した背景

グローバルトレンドに繋がる技術が生まれる必然性があること

イスラエルは日本の四国ほどの国土面積であり、国内需要だけでは大きな経済成長が見込みにくいという課題から、イスラエルのスタートアップにとって、グローバル市場をターゲットとすることは事業拡大のためには避けては通れない道となります。そのため、イスラエルのスタートアップが生み出す技術は、グローバル市場において需要が見込まれる(課題となっている)領域となりやすいことから、その技術動向を整理することによって、グローバル市場の将来的なトレンドを把握することができます。

イスラエル政府が技術開発を支援していること

グローバル市場で躍動する企業の誕生は、国家の経済的繁栄に繋がる重要な資産となります。そのため、イスラエル政府は、イノベーションを生み出すスタートアップを支援する施策を長年実施しています。政府が補助金などの支援を行う領域と行われない領域とでは、将来的な市場のポテンシャルが明らかに異なってきます。本調査では、イスラエルイノベーション庁(IIA)による助成金プログラムについて整理することで、イスラエルにスタートアップが生まれやすい背景としてだけではなく、市場の有望性に関しても裏どりを図っています。

サイバーセキュリティやIT関連の強みを有すること

兵役制を採用しているイスラエルでは、一定数の国民が兵役期間中に高度な技術に触れる機会があります。その中には、企業・事業開発に有効なIT関連の技術も含まれており、結果的に、技術力を有する企業創設者・技術者の育成等、スタートアップを立ち上げるための基盤作りにも繋がります。実際に、本調査でも、IT技術を活用したスタートアップの展開が目立ちます。そういった特色を踏まえうえで、米国・欧州・日本との比較分析から示唆を得るためにも、イスラエルに着目した調査には価値があります。

調査方法・調査対象

事例リスティングのプロセス

将来的に有望な技術をスクリーニングする手法として、本調査では、イスラエルの脱炭素関連スタートアップに投資を行うイスラエルのVC・アクセラレータの投資先から272事例を整理しています。さらに、信頼性の高い公開情報から事例を補完することで網羅性も高めています。

VC等から資金を調達できているスタートアップの技術は、投資家目線でも将来性を見込まれた技術であることの現れでもあります。一定の水準に達したスタートアップの事例を対象とすることによって、より有望性のある技術トレンドの分析を行っています。

調査対象となる15分野一覧

本調査では、272事例を15分野(下表)に分けて整理し、集計・分析を行っています。脱炭素化として想起されやすい自動車のEV化や太陽光発電・風力発電などの再エネ導入だけではなく、非常に幅広い領域・文脈において技術開発が進んでいます。

category_israel

出所:[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版 ※米国版・日本版・欧州版も同じ分野で整理。ただし対象範疇はやや異なる

調査結果の概要

脱炭素テーマランキング

リスティングを行った全272事例を基に、事例数ベースで整理しています。

[ポイント]
(1)各スタートアップの事業規模ではなく、事例数をベースとすることによって、スタートアップが集まっている分野=市場の需要に加え、何かしらのインセンティブが働いている可能性を推察することができます。
(2)米国版、欧州版、日本版等と比較することによって、国・地域別の特徴などの示唆を得ることができます。(脱炭素・気候変動対策スタートアップ調査シリーズでは、調査結果の比較を行いやすくするために、原則的に調査方法や分析手法を統一しています。)

ranking_israel

出所:[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版

事例数上位のテーマ

農林水産自動車・充電エネルギー関連(省エネ・再エネ・グリッド)
農林水産関連では、特に、
「代替食品」、「種子開発・遺伝子工学」、
「データ管理・解析/人工農業/生態調査」、
の事例が多い。
自動車・充電関連では、特に、
「自動運転」、「充電関連」、
「物流・サービス」、の事例が多い。
エネルギー関連では、特に、
「太陽光発電」、「エネルギー貯蔵」、
「省エネ(業務)」、の事例が多い。

農林水産における「種子開発・遺伝子工学」や、自動車・充電関連における「自動運転」のように、イスラエルスタートアップの強みである高度なIT技術が求められる領域も目立ちます。IT関連の技術力は、脱炭素市場において強みとなり、ビジネス開発に繋がることを示唆しています。上表では、各テーマにおいて事例数の多いカテゴリのみの記載となりますが、調査報告書では、全カテゴリの事例数とともに、技術キーワードを整理しています。

IT技術を活用した展開

本調査では、米国版、日本版、欧州版と比較して、「サイバーセキュリティ」に関連した事例が目立つ結果となっています。上述の通り、イスラエルでは軍事的な背景から、ITスキルを強みとするスタートアップが生まれやすくなっており、その具体的なソリューションとして、脱炭素市場におけるサイバーセキュリティという分野が生まれています。
具体的には、エネルギー関連施設への攻撃を防ぐためのサイバーセキュリティ対応によって安定的なエネルギー供給に繋げるといった取り組みが挙げられます。

企業事例(事例数上位テーマ)

農林水産関連①:BetterSeeds(種子開発・ 遺伝子工学)

遺伝子編集技術を用いて農業を革新する企業であり、遺伝子の修正・削除・追加など編集を可能にするツールであるCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)技術を主に活用し、気候変動に強い作物の開発・改良を目指しています。(以降の詳細は調査報告書に記載)

農林水産関連②:InnovoPro(代替食品)

ひよこ豆を原料に植物性タンパク質を開発するフードテック企業となります。同社の開発する植物性タンパク質粉末は、ひよこ豆タンパク質を70%含み、GMO(遺伝子組み換え食品)フリーで、グルテン・乳製品などのアレルギー物質を使用しないという特徴を有しています。(以降の詳細は調査報告書に記載)

自動車・充電関連①:Arbe Robotics(自動運転)

自動車産業、特に自動運転の技術を持つ企業向けに高解像度のミリ波レーダーを開発しています。同社のレーダーは手のひらサイズの小型レーダーでありながら、視野角、分解能、距離分解能、速度分解能のいずれもリアルタイム認識に十分な仕様となっています。(以降の詳細は調査報告書に記載)

自動車・充電関連②:CaPow Technologies(充電関連)

自律移動ロボット(AMR)や自動誘導車(AGV)向けに、常時電力供給を行うプラットフォームを提供しています。従来のバッテリーと充電ステーションの代わりに、ロボットが動きながら電力を得るシステムを開発しています。(以降の詳細は調査報告書に記載)

エネルギー関連①:Apollo Power(太陽光発電)

薄膜太陽光発電技術(ソーラーフィルム)を開発、製造し、その製品をエネルギー需要のある企業に提供しています。軽量かつフレキシブルな点が特徴であり、従来の硬い太陽光発電パネルが使用できない場所でも設置が可能であることが強みとなります。(以降の詳細は調査報告書に記載)

エネルギー関連②:Mada Analytics(エネルギー貯蔵)

薄膜太陽光発電技術(ソーラーフィルム)を開発、製造し、その製品をエネルギー需要のある企業に提供しています。軽量かつフレキシブルな点が特徴であり、従来の硬い太陽光発電パネルが使用できない場所でも設置が可能であることが強みとなります。(以降の詳細は調査報告書に記載)

サイバーセキュリティ関連:Salvador Technologies

ICSおよびOT組織向けのサイバー攻撃復旧とダウンタイム防止のためのセキュリティフェイルオーバー技術を提供しています。革新的なソリューションにより、標準的な復旧プロトコルをバイパスし、30秒以内に業務を再開することができます。エネルギー、水道などの世界の重要インフラ企業で使用できるプラットフォームとなります。(以降の詳細は調査報告書に記載)

参考資料:主な調査対象VC

Amiti Ventures(VC)
AnD Ventures(VC)
Cockpit Innovation(CVC)
Entrée Capital(VC)
Firstime Ventures(VC)
Glenrock Israel(VC)
Greensoil Investments(VC)
Grove Ventures(VC)

iAngels(クラウドファンディング型VC)
Jerusalem Venture Partners(VC)
Maniv Mobility(VC)
MizMaa Ventures(VC)
Nextgear Ventures(VC)
OurCrowd(クラウドファンディング型VC)
Peregrine Ventures(VC)
Pitango(VC)

Terra Venture Partners(VC)
The Trendlines Group(VC)
toDay Ventures(VC)
Viola(VC)

※本調査はすべてのVCおよびスタートアップを対象としていません。ただし、スタートアップは複数の投資家から資金を調達していることが多く、気候テックを対象とする主要イスラエルVCの投資先であるスタートアップをカバーすることで、網羅性を意図した調査を実施しています。
※クラウドファンディング型VC:投資家を募るプラットフォームを提供するVC

まとめ

カーボンニュートラルの実現に繋がるイノベーションがグローバル市場で求められるなかで、脱炭素・気候変動対策スタートアップが生み出す技術は、GAFAMのように将来のグローバルスタンダードとなるポテンシャルを秘めています。脱炭素市場でビジネス企画、オープンイノベーション推進、技術開発を担う方を情報面から支援するために、アックスタイムズでは引き続き、スタートアップの動向に着目した調査を継続します。

記事制作 アックスタイムズ

この記事の元となる「体系的に整理された調査報告書」について

調査報告書名:[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版
発行日   :2024年12月16日
体裁    :PDF_Slide16:9_139pages
調査・制作 :アックスタイムズ株式会社
[目次・調査概要]
https://axetimes.com/report/research-about_decarbonisation-tech-and-business-trend_from-startups_israel_2024/
[税込価格]
事業所ライセンス版PDF  385,000円(税抜350,000円)
企業ライセンス版PDF   385,000円(税抜350,000円)
グループライセンス版PDF 577,500円(税抜525,000円)

[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版
[イスラエル版] 脱炭素スタートアップ事例 及び 次世代技術トレンド徹底調査 2024年版

技術大国「イスラエル」では、国策としてイノベーション政策に注力し、スタートアップが育っている。本調査ではイスラエル脱炭素/気候変動対策系スタートアップ272事例の技術動向から次世代ビジネスを展望しました。